行知学園長 楊舸 式辞
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
本日は、大切な門出を祝うためにお集まりいただいた保護者・ご家族、ご友人、そしてご来賓の皆様に、心より御礼申し上げます。
今年の卒業生は 3 校で 526 名。皆さんの努力と学びへの熱意、そして、先生がたのご指導によって、東京大学、京都大学、一橋大学など国公立大学に 69 名、早稲田、慶應など有名私立大学に 232 名、その他、皆さんは、自分の将来を見据えた興味ある専門分野の研究ができる大学をチョイスし、進学率 98% という輝かしい成績を残しました。
皆さんは、日本語の習得だけではなく、異なる文化や価値観に触れ、多様性を肌で感じながら成長してきました。そうした過程で培った柔軟な思考力やコミュニケーション力は、これからのグローバル社会を生き抜くうえで大きな武器となるでしょう。
2025 年は、目まぐるしい技術革新がさらに進む年でもあります。なかでも、中国で制作された映画「ナタ2」が世界的な大ヒットを記録したことは、中国発のアニメ作品が国際的に高く評価された初めての例として、大きな話題を呼びました。また、DeepSeek というAI 技術が驚異的な性能を見せ、多くの分野で注目を集めています。実際、中国の技術力は分野によっては世界屈指のレベルに達しており、もはや留学生が「先進国で学ぶだけ」の時代は過去のものとなりつつあります。
一方で、情報が瞬時に共有される時代にあっても、多くの日本人が海外に行った経験はまだまだ限られています。統計によれば、日本人のパスポート保有率は約国民17%ほどと言われ、ここ10 年で実際に中国を訪れた人はさらに少ないとも推測されます。スマートフォンやSNS が発達し、あたかも世界のことを携帯一本ですべて知ったような錯覚を抱きがちですが、実際には「自分の好み」に合わせてレコメンドされた情報だけを受け取り、無意識のうちに狭い視野へと閉じ込められてしまっている場合もあるのです。まるで人気アニメ『ナルト』に登場する「無限月読」のように、日に日に自分の信じたい情報だけに浸り続けてしまう危険性があります。
そんな時代だからこそ、留学生として日本に来て学んだ皆さんの役割は一層重要になっていきます。これまでは「先進国で学んで自国に伝える」というイメージが強かったかもしれません。しかし今や、中国をはじめとして、世界各地で新たなイノベーションや技術開発が進められており、国ごとに持ち味が異なる専門性や強みが広がっています。皆さんのように国境を超えて学び、そして日本や母国、さらには第三国との間で橋渡しをする存在こそが、錯視や偏見に陥りがちな時代を打破する要となるのです。
留学生活の中で体験した困難や挑戦は、皆さんの糧になりました。言葉や文化の壁を乗り越えてきたからこそ、しなやかな対応力や多角的に物事を捉える視点を身につけることができたはずです。SNS の情報だけに頼るのではなく、実際に足を運び、現地の人々と交流することで見えてくる“リアル”を知る。そのリアルを周囲に伝え、繋げていくことが、これからの世界をより豊かにしていくと信じています。
卒業は皆さんにとってゴールではなく、新たな始まりです。これから先、専門的な研究やキャリアを積む人もいれば、まったく新しい分野にチャレンジする人もいるでしょう。いずれにせよ、ここで学んだ多文化理解の姿勢や他者を思い
やる気持ち、そして壁にぶつかっても自ら切り拓いていく力を大切にしてください。
最後になりますが、卒業までの長い道のりを支えてくださったご家族、ご友人、そして学園の先生方やスタッフの皆様に心から感謝を申し上げます。皆さんがここまで成長し、自信をもって未来へ踏み出せるのは、多くの方々の支えと応援があったからにほかなりません。 卒業生の皆さん、新たな世界へ飛び立つ船出を祝福するとともに、皆さんが培った知識と経験を活かして、これからさらに大きな飛躍を遂げることを心より願っております。本日は本当におめでとうございます。
令和七年三月二十一日
行知学園 学園長 楊 舸
卒業生 応瑞生 答辞
優秀学生へ表彰と奨学金をお渡ししました
中華人民共和国 駐日本国大使館 参事官
郭 軍 様からの祝辞
行知学園日本語学校 萩野校長の祝辞
行知学園第二附属日本語学校 粕谷校長の祝辞
行知学園日本語学校高田馬場校 山下校長の祝辞
全体記念写真