令和5年度 行知学園日本語学校・行知学園第二附属日本語学校 入学式

令和5年(2023年)4月5日(水)、なかの ZERO 小ホールにて行知学園日本語学校、行知学園第二附属日本語学校の入学式が行われ、計307名の新入生を迎えることとなりました。

以下、学園長式辞を掲載いたします。

入学式 式辞

入学された皆さん、まことにおめでとうございます。

行知学園の教職員とともに、 皆さんの入学を心よりお祝い申し上げます。

来日に至るまでの皆さんの努力と決意に敬意を表しますとともに、皆さんを支えてこられたご家族や関係者の方々にお祝い申し上げます。
また、ご来賓の皆様、本日このような盛大な入学式ができましたのも、コロナ期間中に行知学園を様々な面で支えて いただいたおかげです。 皆さまのご支援を心より感謝申し上げます。

三年間、世界中が新型コロナウイルス感染症の惨禍に見舞われ、特に入国制限により留学の醍醐味である国家間の移動が制約されるという異常な事態が続きました。皆さんも高校や大学時代の大半を、オンライン授業や自宅隔離で過ごし、不安を抱えながら過ごされてきたと思います。そのような中で、皆さんは必死にがんばって日本語の勉強に励み、晴れて今日、 日本留学のスタートを迎えることになり、その喜びもひとしおだと思います。

これにはもちろん皆さん自身のがんばりもあったと思いますが、世界情勢が不安の中、ご家族や友人からの支えも非常に大きかったはずです。そのことも、今日この日に、心に刻んでおいてください。

三年ぶりに対面での入学式を執り行うことができ、こうして皆さんに直接お話しができることを、私は本当に喜ばしく思っています。
行知学園は「教育で世界をつなぐ」という理念のもとに作られた学校です。IT革命で世界中のニュースがいつでもどこでも容易に手に入り、便利な翻訳アプリもますます増えている現在、世の中ではあたかも海外留学や外国語の習得は必要なくなっているように見えていますが、私は、情報が爆発する今だからこそ、留学と外国語の習得はますます重要だと考えています。

みなさんは「背中伝言ゲーム」を知っていますか?このゲームは、何人かが同じ方向に一列に並び、始めの人が次の人の背中に指で文字を書き、 最後の人が初めの人が書いた文字をあてるというゲームです。喋ることや見ることを禁止されたルールのなか、背中の感覚だけで最後の人は、始めの人が書いた文字を当てることは極めて難しいこと です。なぜなら、最後の人は「知らない誰か」を経由した限られた情報で判断するしか方法がないからです。

現実の世界も全く同じです。みなさんが情報の受け取り者であるならば、日常的に見る海外のニュースというのは 「 知らない誰か」が加工した情報でしかありません。そして、その場所に存在せず、かつその国の言語を知らない人た ちは、「知らない誰か」からの情報を鵜呑みにするしかありません。 それは「背中伝言ゲーム」と同様に、正しい判断をすることは、非常に難しいことだと思います。

では、最後の人はどうやったら正しい情報を得られるのでしょうか?
簡単です! それはゲームのルールを破って、はじめの人に直接聞けばいいのです。
みなさんが留学し、外国語を習得する道を選んだというのは、大多数の人が無意識で守っている情報伝達ルール から逸脱した道を選んだということになります。みなさんがここで学ぶべきことは言語だけでなく、正しい情報とそうではない情報を選別できる力を習得することです。それこそが留学した皆さんにとって、重要なことなのです。

もう一つお話ししたいのは、留学とは自分自身が言語を習得し、知見を広げることだけが目的ではありません。 留学先で出会った大勢の人の心に自分という存在の「足跡」を残すことが重要です。なぜなら、言語を学ぶだけなら、家のパソコンを通してでもできます。 しかし、人の心に自分という存在の「足跡」を残すことは、いかなる優秀な翻訳ソフトやAIソフトでもできないことです。

みなさんはこれから日本語学校で一年から二年間、 その後、大学や大学院への進学、 更には、就職もするかもしれません。 つまり、最低でも4年以上は日本に住むことになります。 この長い期間に、 みなさんがこれから出会う様々な 日本人に、自分や自分の故郷の何を伝え、何を残したいのか、自分の成長を踏まえながらじっくりと考えてください。

今後、多くの日本人と交流し、様々な文化や習慣に触れることで、自分自身の視野が広がることでしょう。その経験を 通じて、自分の故郷の良さや違いを再認識し、社会における自分の役割を見つけることができると思います。また、 異文化間でのコミュニケーション能力や理解力が向上し、グローバルな視点を持つことができるようになります。

私たち教職員は、皆さんの生活や学業における最大限のサポートを行い、安心して学べる環境を提供することを目指しています。 しかし、最終的には皆さん自身が積極的に学び、成長する姿勢が大切です。どんな困難にも立ち向かい、乗り越える力を身につけることが、将来の皆さんにとって大きな財産となるでしょう。

これからの日本での生活は、時には楽しく、時には困難なこともあるでしょう。しかし、そのすべてが貴重な経験となり、人生に役立つものとなることを信じています。どんな困難な状況にも立ち向かう勇気と、自分を信じる強さを持って、日本での学びの旅を進めてください。

最後に、皆さんが日本での学業や生活を通じて、素晴らしい経験を積み、自己成長を遂げることができることを願っています。また、お互いに助け合い、協力し合いながら、この学びの場で友情を深め、国際的な視野を広げることができることを期待しています。

改めて、入学おめでとうございます。

令和5年4月5日
行知学園 学園長 楊舸

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