2021年3月6日、毎日新聞「経済プレミア」にて取材記事掲載のお知らせ

毎日新聞「経済プレミア」にて弊社代表楊舸による中国人留学生についての取材記事が掲載されましたので、ぜひご覧ください。

以下、掲載記事全文です。

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経済記者「一線リポート」

タイトル:外国人が留学や投資で「日本行き」をためらう理由

安藤大介・毎日新聞経済部記者

2021年3月6日

「留学先に米国を選ぼうとしていた中国人学生が日本の大学・大学院に注目しています」

こう話すのは東京・新大久保で中国人向けの進学予備校「行知学園」を経営する楊舸社長(34)だ。新型コロナウイルスの感染拡大や米中関係の悪化を受け、米国留学を目指していた学生が、代わりに日本を検討する動きがあるという。

楊社長は「受け入れる日本の大学の姿勢には改善すべき点がある」とも指摘する。詳しく話を聞くと、日本の外国人受け入れ態勢には課題があると感じた。

留学先は米国が人気だったが

中国の受験競争は厳しい。希望の大学に行けず、いったん挫折を経験した学生たちは、人生を変える場として日本を選ぶケースが増えているという。楊社長は「日本の有名大学院に最終学歴を変える一種の学歴ロンダリング(洗浄)だ」と語る。

以前は日本にそうした中国人向けの予備校はなく、楊社長自身、名古屋大の入学時に独学で苦労を重ねた。在学中にインターネットの掲示板に記した自らの受験体験が評判を呼び、行知学園の開設につながった。だから留学生が直面する苦労はよく知っている。

中国人学生に人気の留学先は圧倒的に英語圏だ。中国では幼少期から英語教育が盛んで、米国、カナダ、豪州、英国が人気だ。その中で一番は米国で、2019年には国別で最多となる37万人の中国人留学生が学んだ。

しかし新型コロナの感染拡大が状況を変えた。米国では感染拡大が収まらず、トランプ政権下の米中関係悪化も強い逆風になっている。米国で学んでいた中国人留学生は、現地企業への就職や大学で研究を続けるという選択肢を断念し、中国に続々と戻っているという。

そこで米国に代わる留学先として注目されている国の一つが日本というわけだ。文部科学省が世界レベルの教育環境を目指す施策として14年に始めたスーパーグローバル大学創成支援事業によって、外国語のみで卒業できるコースを持つ大学が日本でも増えた。日常生活で漢字が使われ、治安が良いのも中国人にはプラス材料だ。

日本の大学は「受け入れてあげる」

一方、楊社長は「日本の大学は欧米の大学と比べて、受け入れの面でサービスが劣っている」と、マイナス面も指摘する。

住居の面で大学寮の規模は希望者数に遠く及ばない。入寮を希望しても高倍率の抽選となり、入れない留学生は多い。また、ビザの取得から実際の日本の暮らしまでわからないことは多いが、大学のサポート態勢に不満を抱く留学生が少なくないという。

楊社長は「日本の大学には『受け入れてあげている』という姿勢が目立つ。留学生の受け入れをビジネスと捉え、サービスに徹する欧米の大学との違いは大きい」と語る。

外国人投資家にも必要な視点とは

そんな話を聞き、私の頭に浮かんだのは金融業界で昨年盛り上がった「国際金融センター」をめぐる議論だ。

政府は成長戦略として海外から外国人投資家を呼び込もうとしている。以前からある構想だが、昨年の香港の政情不安を受け、海外に拠点を移そうとする投資家を呼び込もうと本腰を入れている。

受け入れ態勢の整備は進んでいる。金融庁は日本市場に参戦する海外ファンドの手続きを英語でできる窓口を設けた。21年度税制改正大綱では所得税や相続税などの負担を軽減する装置が盛り込まれた。

ただ、金融市場では「海外の国際金融都市では当然のことだ」と冷めた見方がある。国際金融都市として先行する香港やシンガポールは所得税の最高税率はすでに低く、海外投資家が暮らしやすい環境整備を長年進めてきた。

日本が海外の投資家に選ばれたいのなら、一時的な環境整備にとどまらず、投資家に寄り添う姿勢を保つことができるかどうかが重要だろう。

留学生でも投資家でも日本を訪れた外国人が満足できる環境があれば、評判を呼び、続く新たな人材流入につながるはずだ。外国人の受け入れ増を目指すなら、その人たちの視点を徹底的に意識し、ニーズに応える努力が必要ではないか。重要なのは受け入れる側の覚悟だと感じた。

 

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